新古美術 朝比奈

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Collections作品紹介

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Protagonist(pictograph)
文字絵『主人公』

Artist
作家名
Tourei Enji
東嶺円慈
Material
手法
Ink on Paper
紙本・墨
Dimensions
寸法
本紙 96.6×27.8㎝(Image)
総丈179.0×32.0㎝(Mount)
Caption
備考
『無門関』第十二則「巌喚主人(がんしゅじんをよぶ)」という公案↓を、画題にしたもの。

「瑞巌彦和尚、毎日自ら「主人公」と喚び
 復(ま)た自ら応諾す。
 乃(すなわ)ち云く、「惺惺着、諾。
  他時異日、人の瞞を受くること莫れ。諾諾」。

(読下し)
中国浙江省・丹丘の瑞巌寺に住した、中国唐代の禅僧・瑞巌師彦(ずいがんしげん)禅師は、 毎日自分自身に向かって「主人公」と呼びかけ、 「ハイ」と返事をして、さらに「はっきりと目を醒ましているか」 「これから先も人に騙されなさんなや」と問い 「ハイ、ハイ」と自問自答していた。

(解説)
よく見ると、賛の下に描かれる座禅を組む人物は「主」「人」「公」の三文字で構成された所謂「文字絵」であることに驚く。

現在では「主人公」という言葉は、文学や映像作品の中心人物というイメージだが、
元は禅語で「本当の自分(仏性)」のことを指している。
東嶺は「主人公」と書く事で、外部の事象、内面からわき出る煩悩や妄想などに心を惑わされず、
生まれながらにして与えられている自身の仏性に目覚めていくことが大切だと説いている。

・関防印「臨済正宗」
・サイン「不々庵主(花押)」、印「東嶺」「圓慈之印」
東嶺はこの主人公の図に限って必ず「不々庵主」と落款している。
不不という語は、『金剛経』の「不不也(フ-ホチャ)」からで、有無を超克した絶対の境地の意。
そして、よく東嶺の花押はその形状から蛤と称されるが、これも主人公の三文字を花押にまとめたもの。
≪賛≫
頂門揮劒
脚底錬丹
三世放下
十方聴観
主中主我
何似莫身
心境法瞞

(読み)
頂門(頭上、人間の急所)に剣を揮い
脚底に丹を錬り(心気を丹田に集中して心身を練る)
三世(現在・過去・未来)放下(俗世を解脱)
十方(あらゆる方向)聴観(見聞する)
主中主我(己の利益を主として、他を思わない考え。)
何を似って(どうして)か身心に境法の瞞(あざむく)を莫からん(ことなかれ)や(=明瞭さをなくしてはいけない)

Period
製作年
Mid-Edo period
江戸時代中期
Condition
状態
There are stains and folds.
シミ、折れが御座います。
Accessory
付属品
Box with calligraphy by Takeda Mokurai.
竹田黙雷極箱
Biography
略歴
【東嶺円慈(1721~1792)】
日本の江戸時代中期の臨済宗の僧侶。
近江小幡駅出町(滋賀県東近江市五個荘小幡町)に生まれる。
元文2年(1737)17歳の時に日向大光寺の古月禅材に参禅。次に丹波法常寺の大道文可に参禅する。
寛保3年(1743)に近世臨済禅中興の祖・駿河松蔭寺の白隠慧鶴に参禅、寛延2年(1752)29歳で白隠の法を嗣ぐ。遂翁元盧、霊源慧桃、大休慧昉と共に白隠門下四天王の一人に数えられる。

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